一般民事の弁護士 茨城県水戸市の中城法律事務所

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近隣トラブル

1 接道義務について

住宅やマンションなどを建築する際には、その敷地が接道義務に違反しないことを確認しなければなりません。

接道義務とは、建築物の敷地が建築基準法上の道路に2m以上接しなければならないというルールです。

建築基準法では、幅員4m以上の道路だけを「道路」であると認めています。

建築基準法の道路は、道路法・都市計画法・土地区画整理法・都市再開発法などに基づいています。ただ、これによらないで造る幅員4m以上の道で、特定行政庁による位置の指定を受けたものを位置指定道路といいます。

位置指定道路は、敷地の所有者が設ける私道であるのが原則です。その敷地に建築物を建てるために設けられます。

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2 通行権について

私道とは、一般の人が所有する土地に存在する道路です。したがって、所有者の承諾がなければ通行できないのが原則です。ここでは、他人の土地に対する通行権をみていきます。

ア 袋地通行権

他人の土地に囲まれて公路に通じない土地を袋地といい、袋地を囲んでいる他人の土地を囲繞地(いにょうち)といいます。

民法は、袋地の所有者に対して、囲繞地を通行して公路へ出る権利を認めました。袋地通行権は、囲繞地所有者の承諾があるかどうかに関係なく、法律上当然に発生します。

イ 通行地役権

通行地役権とは、他人の土地を通行するために設定される通行権(物権)のことです。通行地役権は、当事者間の合意によって発生します。この点、袋地通行権とは異なります。

ウ 賃借権・使用貸借権による通行権

通行権は、当事者が賃貸借あるいは使用貸借といった契約を利用して設定することができます(債権)。通行の対価を支払う場合が賃貸借で、対価を支払わない場合が使用貸借です。

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3 越境建築について

隣人が越境して建物を増改築しているような場合どのように対処すべきでしょうか。

この場合、裁判所に対し、建物建築禁止の仮処分命令の申し立てをすることが考えられます。

仮処分という民事保全制度を利用するのは、増改築が進むほど、その工事を止めるのが困難になるからです。

なお、建築開始から1年が経過するか、建築が完了すると、建築の中止を求めることができなくなります。そうなると、隣人に対し損害賠償の請求をするしかありません。

したがって、早めの対処が必要になります。

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4 建物建築と境界線について

民法は、「建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければならない」と規定しています。

これに対し、建築基準法は、都市計画区域(第一種低層住居専用地域など)において、建築物の外壁と道路や隣地境界線との距離を1mまたは1,5m以上保たなければならないとする規制を設けています(これを壁面後退といいます)。

もっとも、防火地域などでは、外壁を耐火構造にするのを条件に、隣地境界線との距離を保たなくてよいとする例外を設けています。

建築基準法は民法に優先して適用されるので、建物を建築する際には、建築する地域の情報を得る必要があるでしょう。

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5 建築工事のための隣地使用について

隣地との境界線近くに建物を建築する場合、足場を作るのに隣地への立ち入りが必要になるでしょう。

民法は、建物建築や修繕に際し、必要な範囲で、隣地への立ち入りを請求できるとしています。

もっとも、民法が認めているのは、隣地への立ち入りを相手に請求することだけですから、相手の承諾なく勝手に隣地へ立ち入ることまではできません。なので、相手が承諾しない場合、隣地所有者の承諾に代わる判決を求めて裁判所に訴えを提起することになります。

それと、隣地の所有者にその使用に際し損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければなりません。

なお、民法は、建物建築のために、隣地への立ち入りを認めているだけですので、隣地にある住居へ立ち入るようなことはできません。

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6 目隠しについて

隣地境界線付近に建物を建築することができるとしても、隣家のプライバシーを侵害することまでは認められません。

そこで民法は、境界から1m未満のところに窓、縁側、ベランダを作る場合には目隠しをつけなければならないと規定しています。

もっとも、市街地など建物が密集している地域で目隠しを不要とする慣習がある場合には、その慣習に従い、目隠しをつける必要はありません。

また、高層ビルなど隣地を見下ろす構造の建物について、隣家との間でプライバシーの問題が発生することもありえますが、高い階数の部屋に目隠しをつける必要はないと考えられています。

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7 境界の変更について

私法上の境界を変更することは、当事者の合意によって可能です。あくまで、当事者間の所有権の範囲の問題に過ぎないからです。

これに対し、公法上の境界を当事者の合意で変更することはできません。公法上の境界は所有権の範囲の問題でなく、地番という筆界に関する国の所管すべき事項だからです。公法上の境界を変更する際には、登記を分筆・合筆するという方法が一般にとられます。

なお、公法上の境界は、(法務局での)筆界特定制度や、(裁判所での)境界確定訴訟といった公の方法で決めることになります。

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